母親が勝手に子犬を買ってきたのでした。前から僕は犬を飼いたいとは言っていましたが、全く話は聞かされていませんでした。
子犬は5か月のチワワで、色はブラック・ホワイトでした。
犬を飼ったことはなかったので、抱き方もわかりませんでした。かわいいなと思いながらも、部屋の中を嗅ぎ回る子犬をただ観察してました。
すると急にそわそわしだして、目の前でうんちをしました。先が思いやられました。
名前は毛色が黒かったことと、好きなゲームがクロノトリガーであったことから「くろの」と名付けました。
自宅警備員の僕にエサやりもしつけも任されました。
2名の自宅警備員
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家の中でいつも一緒でした。 |
ふと現実にかえり、自己嫌悪に苛まれた時は、くろをぎゅっと抱きしめました。
「おにいちゃんはダメ人間だろ」と問いかけても、くろは何も言いませんでした。
はじめてのさんぽ
くろを庭に出すと、くろは嬉しそうに走り回りました。その姿を見ていると、もっと広い場所で好きなだけ走らせてあげたいと思うようになりました。しかし、外に出たくないという思いもありました。知り合いに会うのが嫌だったのです。会って、「学校は?」「受験は?」と聞かれるのが怖かったのです。
しかし、可愛いくろのことを想って、世間が冬休みになる時期に合わせて散歩に行く決意をしました。
時間は人も少ない夕方遅くに設定しました。場所は歩いて数分の公園に決めました。
ただ近くの公園に行くだけなのに、外に出るのはかなりの覚悟が要りました。
恰好が変でないか気になり、何度も鏡で服や髪型を確認しました。
玄関を開けて、門を開けて、さあ行こうと自分に気合を入れました。
しかし、肝心のくろが怖がって一歩も動きませんでした。僕にとっては久しぶりの外ですが、くろにとっては初めての外だったのです。
「怖いのは俺だけじゃないのか」と少し緊張が解れました。
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歩かなかったのでかごに乗せました。 |
仕方がないのでくろを自転車のかごに乗せて、公園まで行きました。
公園には犬を連れたおじいさんやおばあさんがちらほらいるだけでした。
かごから降ろしても、くろはべたっと地面にくっついて一歩も動きませんでした。
2匹のダックスフントが見知らぬくろに興味を示し近づいてきました。連れていたのは、宮崎駿似の気のやさしそうなおじいさんでした。
「こんにちは」「こんにちは」飼い主同士は挨拶をするのがルールということを知りました。おじいさんは地面に張り付くくろをみて「そのうち慣れるよ」とアドバイスをくれました。
そのあとも、くろのことで二言三言交わしましたが、僕の事については何も聞かれませんでした。
「散歩の世界の中心は犬なんだ」と安心しました。
その日から散歩が日課となりました。
次第にくろも公園を駆け回るようになりました。
くろが家に来てから、自分が世話をしなければならないと責任感が生まれました。
辛いときにいつも傍にいてくれたので孤独感は薄まりました。
散歩が日課となることで社会との繋がりを気楽に保てました。
くろは不登校からの立ち直りには欠かせない存在でした。
くろとくろを連れてきた母に感謝します。
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